2012/10/11
先日発表された会社法制の見直しに関する要綱案のなかで登記手続に影響があるものは多々ありますが、中小企業にとって一番身近なものは監査役の監査の範囲に関する登記の導入ではないでしょうか?
要綱案はあくまで要綱案ですので実現しない可能性もあるわけですが、会社法施行当時から、監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されるのか、業務監査も含むのかについては重要な意味があるにも関わらず登記の義務づけが見送られました。
現行の登記制度では、監査役設置会社である旨だけが登記事項となっていますので、監査役の監査の範囲が会計監査に限定されているかどうかは登記簿だけでは判明せず、定款を確認する必要があります。
会計監査限定監査役とそうでない監査役(業務監査も含む)で具体的に何が違うかというと、例えば次のような点が挙げられます(以下、監査の範囲が会計監査に限定される監査役を「会計監査限定監査役」、限定されず業務監査も行う監査役を「監査役」と呼ぶことにします)。
・監査役は取締役会に出席する義務があるが、会計監査限定監査役はない。
・会社が取締役に対して訴えを提起する場合、監査役のいる会社では監査役が会社を代表するが、会計監査限定監査役を置いている会社の場合は代表取締役が会社を代表する。
・監査役のいる会社は、定款に定めることにより役員の会社に対する責任を免除することができる(会社法426条)。会計監査限定監査役の場合はできない。
・監査範囲を会計監査に限定する定款の定めを置いていた会社がその定めを廃止したときは会計監査限定監査役の任期が満了するが、登記簿だけではそれがわからない。
監査役の監査の範囲が会計監査に限定されているかどうかが登記されるだけで上記のようなことがすぐにわかり、会社の役員・株主その他関係者にとってもメリットは大きいので実現して欲しいところです。
ただ、改正にあたり登記に登録免許税(おそらく3万円?)が必要になると会社の負担が大きいので、当面は免除してもらわないと、単なる増税法案になってしまいます。
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2013/12/2加筆
会社法の改正案が2013年11月29日に閣議決定され「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社について、当該定款の定めがある旨を登記事項に追加するものとすること。」となりました。
監査役の監査の範囲が登記事項となることは確定したわけですが、具体的な登記手続はまだわかりません。引き続き注意して見ていきたいと思います。
タグ: 監査役
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2012/07/10
平成24年7月9日から、「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」と「住民基本台帳法の一部を改正する法律」が施行されております。
既に各所で取り上げられておりますので、ここでは備忘録として何点か挙げるに留めます。
大きな変更点としては、
(1) 外国人にも住民票が作成されます
これにより、従来住民票と似た役割を果たしてきた外国人登録原票記載事項証明書は市区町村役場では取得できなくなります。亡くなった方に係る外国人登録原票の写しの交付請求等は、法務省に対して行うことができます。
死亡した外国人に係る外国人登録原票の写しの交付請求について
(2) 外国人登録証明書が在留カード(特別永住者は特別永住者証明書)になります
切り替えには一定の猶予期間があります。
詳細は、下記のサイトをご覧ください。
新しい在留管理制度がスタート!(法務省)
外国人住民に係る住民基本台帳制度について(総務省)
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2012/03/15
平成24年5月21日から、会社法人等番号の付番方法が変更されます。
(会社法人等番号は、すべての会社や法人に振られていて、登記事項証明書の左上に表示されている番号です。)
現在は、組織変更、他の登記所の管轄区域内への本店の移転の登記等をする場合又は管轄登記所が変更となる場合、新たな登記記録について、これまでとは異なる新しい会社法人等番号が付番されることとなっていますが、変更後は、従前の会社法人等番号がそのまま引き継がれます。
なお、この付番方法の変更の対象は、会社/法人等の本店・主たる事務所の登記記録に限られ、支店・従たる事務所の登記記録、外国会社・法人の登記記録及び個人商人に係る登記記録については、現在の付番方法と変わりません。
cf.会社法人等番号の付番方法の変更について(法務省)
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2012/02/07
平成24年4月1日からNPO法が改正されます。主な変更点は次のとおりです。
(1) 特定非営利活動の追加
NPOは法律で定められたものしか、その行う特定非営利活動に挙げることができません。その活動に、
・観光の振興を図る活動
・農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
・別表第1号から第19号までに掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
が追加されました。
(2) 所轄庁の変更
従来は、その事務所が所在する都道府県の知事(2以上の都道府県の区域内に事務所を設置するNPOについては、内閣総理大臣)でしたが、都道府県知事に統一されました。
(3) 社員総会の決議の省略
株式会社と同様に、社員の全員が同意していれば、社員総会決議を開催しなくても社員総会の決議があったものとみなされることになりました。
(4) 理事の代表権の範囲又は制限に関する定めと登記
従来は、理事全員が法人を代表する者とされ、理事の代表権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できず、登記もできませんでした。
改正後は、代表権の範囲又は制限に関する定めが登記できるようになります。
現在、定款に代表権の範囲又は制限に関する定めのあるNPO法人は、平成24年4月1日から6ヶ月以内にその登記をしなければなりません。
(5) 定款変更の際の届出事項の拡大
NPOでは、定款変更の際に所轄庁の認証が必要な事項と不要な事項があります。改正により、次の事項を変更する定款変更についても、所轄庁の認証を要しないとされました(届出は必要)。
・役員の定数に係る役員に関する事項
・会計に関する事項
・事業年度
・残余財産の帰属すべき者に係るものを除く、解散に関する事項
(6) 認定制度及び仮認定制度の導入
NPO法人のうち、その運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資するものは、所轄庁の認定を受けることができるとされました。
認定を受けた場合は、「認定特定非営利活動法人●●●」とする変更登記ができます。
仮認定の場合は、「仮認定特定非営利活動法人●●●」と変更する登記ができます。
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内閣府のサイトも参考にどうぞ。
法務省のサイトに代表権を有する理事以外の理事の代表権喪失の登記申請書書式や通達があります。
(平成24年2月3日民商第298号参照)
タグ: NPO, 特定非営利活動法人
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2012/01/19
平成24年2月20日から、全ての登記所の信託目録について、登記情報提供サービスにおける提供が可能となる予定です(平成24年1月13日法務省民二第120号)。
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2011/07/04
施行日がいつかとやきもきしておりましたが、平成23年7月1日より、オンライン申請における登録免許税の軽減措置が変更されました。
当初4月1日から変更される予定だったものが、つなぎ法案の成立により延期されていたものです。
詳細はこちら(法務省のサイトに飛びます)。
会社設立や所有権移転登記等において、今まで登録免許税の10%(最大5,000円)の減額がなされていたところ、7月1日以降は最大4,000円の減額となり、減額幅が縮減されます。
タグ: オンライン申請, 登録免許税
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2011/03/02
成年後見に関する登記手数料も平成23年4月1日から値下げが予定されています。自分のメモも兼ね、その中から証明書交付に係る手数料を取り上げておきます。
窓口又は郵送での交付請求
登記事項の証明書 800円→550円
登記されていないことの証明書 400円→300円
オンラインによる交付請求
(1)登記事項の証明書
紙の証明書 490円→380円
電子的な証明書 440円→320円
(2)登記されていないことの証明書
紙の証明書 330円→300円
電子的な証明書 280円→240円
(おまけ)
成年後見に係る証明書は、平成19年4月1日にも値下げされていて、当初から辿ると、次のようになります。
[窓口・郵送]登記事項の証明書 1000円→800円→550円
[窓口・郵送]登記されていないことの証明書 500円→400円→300円
[オンライン]登記事項証明(紙) 750円→490円→380円
[オンライン]登記事項証明(電子) 700円→440円→320円
[オンライン]登記されていないことの証明(紙) 450円→330円→300円
[オンライン]登記されていないことの証明(電子) 400円→280円→240円
タグ: 成年後見, 登記事項証明書
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2010/12/28
既に各所で紹介されていますが、平成23年1月1日から、登記情報提供サービスの利用料金が値下げされます(cf.登記情報提供サービスの利用料金の改定について)。
全部事項(不動産登記、商業・法人登記) 465円→457円
所有者事項(不動産所有者名と住所のみの情報提供) 155円→147円
地図、図面等の情報の提供 455円→447円
動産譲渡登記事項 概要ファイル情報 425円→417円
債権譲渡登記事項 概要ファイル情報 425円→417円
いつもながら思うのですが、この中途半端な数字はなんとかならないものか(笑)
平成23年4月1日からは上記の手数料がさらに値下げされるとともに、法務局発行の登記事項証明書等の手数料も値下げされます(cf.平成23年度予算政府案における登記手数料の引下げについて)。
登記事項証明書(窓口) 1,000円→700円
登記事項証明書(オンライン請求・送付) 700円→570円
登記事項証明書(オンライン請求・窓口交付) 700円→550円(新設)
印鑑証明書(窓口) 500円→変更無し
印鑑証明書(オンライン請求・送付) 500円→460円
印鑑証明書(オンライン請求・窓口交付) 500円→440円(新設)
登記情報提供サービス(全部事項) 457円→397円
登記情報提供サービス(地図等) 447円→427円
なお、平成23年4月から窓口で登記事項証明書等を取得する際は、従来の登記印紙ではなく収入印紙で納付することになります(購入済みの登記印紙は引き続き使用可能。cf.平成23年4月1日からの登記印紙の取扱いについて)。
2011/2/15日追記
法務局から新しいリリースが出たことに伴い若干修正しました(赤字部分)。
2011/3/3追記
平成23年4月1日からは、謄抄本の枚数による加算額も値下げされます。
(現状)証明書が10枚を超えると10枚ごとに200円加算
(改定後)50枚まで基本料金で取得でき、超える枚数50枚までごとに100円(要約書は50円)加算
タグ: 登記事項証明書, 登記手数料, 謄抄本
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2010/08/11
現行民法における親権の制限については、親権全部の喪失(一部の制限としては管理権の喪失)制度しかなく、オールオアナッシングで影響が大きいこと、また、親権を一時的に制限する制度がないことから、親権に関する民法改正が予定されています。現在下記ページで意見募集中です。
「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案」に関する意見募集
詳細は上記ページを見ていただくとして、要点は以下のとおりです。
1) 親権の制限の全体的な制度の見直し(親権の一時的制限制度、一部制限制度の創設)
2) 親権を行うことができないようにするのとは異なる方法による実質的親権制限の制度(家庭裁判所による同意に代わる許可)創設
3) 未成年後見制度の見直し(法人による未成年後見、複数の未成年後見人を選任できるようにする)
法律案は、平成23年の通常国会に提出予定です。
2011/6/17追記
公布日は平成23年6月3日であり、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。
法案内容に関する法務省のページ
2012/1/4追記
施行日は平成24年4月1日となりました。また、裁判所HPに下記のとおりPDF資料が掲載されております。
民法等の一部改正と新しい親権制限の制度-児童虐待を防ぐために-
タグ: 親権, 民法改正
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2010/06/07
平成22年6月18日から、利息制限法改正の条文が施行されます。
現行の利息制限法の第1条は下記のとおりですが、
(利息の最高限)
第一条 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
元本が十万円未満の場合 年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
元本が百万円以上の場合 年一割五分
2 債務者は、前項の超過部分を任意に支払つたときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができない。
第2項が削除されます(判例により既に空文化されていましたが)。
また、営業的金銭消費貸借の特則が第5条以降に新設されました。
法務省の要点解説はこちら。
要するに今の裁判所の解釈を条文に盛り込んだというところです。
(民法ではありませんが重要な民事法なので取り上げました)
タグ: 利息制限法
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