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中小企業に役立つ商法改正の知識

ここでは、最近の商法改正と、次期会社法改正のうち、知っていると役立つものを紹介いたします。

下記リストからご興味のあるタイトルをクリックすると該当部分にジャンプします。

平成16年10月改正
 株券不発行制度
 株主名簿閉鎖制度の廃止
平成17年8月改正
 LLP(有限責任事業組合)
次期会社法改正(平成18年5月頃)
 有限会社はなくなるの?
 改正後の有限会社から株式会社への組織変更手続
 最低資本金制度の撤廃
 既にある確認会社(1円会社)はどうなるの?
 株式会社の有限会社化(主に役員につき)
 役員任期の伸長
 取締役会の書面決議が可能になります
 類似商号の規制廃止
 合名・合資会社の規制緩和
 合同会社(日本版LLC)
● 株券不発行制度

定款で株券を発行しない旨を定めた会社(=「株券廃止会社」)については、株券を一切発行する必要がなくなる制度が、株券不発行制度です。今後すべての会社が株券を発行しなくなるわけではありません。

今まで株式会社は原則として株券を発行する必要がありましたが、実際にはほとんどの中小企業が発行していませんでした。この違法状態が平成16年10月から解消されます。また、積極的に株券廃止会社に移行することにより、今まで株券を発行していた会社も株券を発行しなくてよくなり、株券管理コストの大幅削減が可能となります。

★株券の取扱方法からみた株式会社の種類(平成16年10月以降)
種類 株券廃止会社 準株券廃止会社 株券発行会社
どんな会社か? 定款で株券を発行しない旨を定めた会社
定款に株券を発行しない旨の定めはないが、すべての株式につき株券が発行されていない会社
一部または全部の株式について株券を発行している会社
注意点 株券は一切発行不要。新株予約権証券は発行できない(ストックオプションを発行したとき証券を発行できない)。また、新株予約権付社債(ワラント債)、新株引受権証書については不発行制度はない。
株主より株券発行請求があれば、株券発行義務あり
主なメリット @ 株券発行コスト(紙代、印紙代)の削減
A 株券の名義書換が不要になる
B 悪意を持った者に株券を転々と譲渡されることがなくなる
C 株券の盗難防止
@ 株券を持つことによる安心感
主なデメリット @ 株券の代わりに株主名簿記載事項証明書が第三者対抗要件となるため、この発行依頼が増える可能性あり @ 株券の発行・管理コストがかさむ
株券発行会社から株券廃止会社への移行の方法:
@ 定款変更(株主総会の特別決議による)
   ↓
A 官報公告
   ↓
B 登記
※詳しくはお問い合わせください。

● 株主名簿閉鎖期間の廃止

会社の重要な会議の一つとして、定時株主総会があります。これは毎年決算期後3ヶ月以内に開催され、決算の承認が行われます。株主総会の招集通知は基本的に総会の2週間前(閉鎖会社は定款で1週間に短縮可)に発送しますが、株主の多い会社では株式の譲渡をリアルタイムで把握することが困難なため、総会の2週間前に株主を正確に把握して招集通知を発送することは事実上不可能でした。ゆえに「株主名簿の閉鎖期間」と「基準日」という、2種類の制度が設けられていました。

「株主名簿の閉鎖期間」とは、営業年度末日から定時総会終結の日まで、株主名簿の書換を停止する制度です。これにより、定時総会の招集通知は営業年度末日の株主に対して発送すればよくなります。

例えば、3月決算で定時株主総会が6月25日の会社なら、4月1日から6月25日までに行われた株式譲渡に関する株主名簿の書換は6月26日以降に行われます。

「基準日」とは、ある一定の日を定め、総会招集はその日(例えば3月31日)現在の株主に対して発送すればよいとする制度です。

上記2つは併用することもできました。

改正により、株主名簿の閉鎖制度は廃止され、基準日制度に一本化されます。
従前から定款に閉鎖期間が記載されている会社は、「名簿閉鎖期間の初日の前日を基準日に指定する旨の定款の変更決議があったものとみなされる」(株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律附則第36条第19項)ため、特に株主総会の決議を要しませんが、平成16年10月1日以降の最初の株主総会で、形式的に定款変更を行っておくのが望ましいでしょう。

● LLP(有限責任事業組合)
平成17年8月1日から、「有限責任制」「内部自治原則」「構成員課税(パススルー課税)」の3つを主な特徴とする、日本版LLP(有限責任事業組合)が設立可能となりました。ベンチャー・共同事業などで幅広い活用が見込まれます。ただ、共同事業要件(各組合員が業務の執行に関与しなければならない)があるため、投資目的の利用は制限されます。投資目的の場合は従来からある投資事業有限責任組合などを使うことになります。

● 有限会社がなくなるの?
今ある有限会社はそのまま存続できますが、新会社法施行後は新たに有限会社を作ることができません。「有限会社」という名称も継続使用でき、役員の任期も現行のまま無期限です。新会社法による株式会社は役員の任期を10年まで伸ばすことができますが、無期限にはできませんので、ある意味、株式会社より有利です。

● 改正後の有限会社から株式会社への移行手続

現在、有限会社を株式会社に移行(組織変更)するには純資産額要件があり、貸借対照表上の純資産額(資産の部から負債の部を引いたもの)が1000万円以上である必要があります。もし1000万円未満の場合は増資をしてから組織変更するというステップを踏まなければなりませんでした。

改正後は純資産要件がなくなるので、株式会社への移行がしやすくなります。

● 最低資本金制度の撤廃
最低資本金の規制がなくなります(現行は有限会社で300万円、株式会社で1000万円の資本金が必要でした)。但し、資本金300万円未満の会社は余剰金があっても利益分配ができないなど、多少の規制は残ります。

● 既にある確認会社(1円会社)はどうなるの?

改正を待たずとも、最低資本金制度の特例(中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律)を利用して資本金1円から会社を設立することができますが、定款に解散事由(「5年以内に増資をするか最低資本金の関係ない会社に組織変更しない限り解散する」旨の文言)を入れなければなりませんでした。

新会社法施行後、増資をせずに確認会社を存続させる場合は、解散事由の抹消の登記をする必要があります。

● 株式会社の有限会社化(主に役員につき)
株式会社の組織が有限会社に近いものになります。
(例)
  • 取締役が1名でよくなる 
  • 監査役がいなくてもよくなる
役員の人数が揃えられない場合、現在は有限会社・合名会社・合資会社を選択せざるを得ませんが、改正後は自由に選べるようになります。

● 役員任期の伸長

(現 行)取締役2年、監査役4年
(改正後)定款で定めれば10年まで伸長可

現在、株式会社は2年ごとの役員変更登記が必要であり負担となっていましたが、任期が最高10年まで伸ばせるようになり、少し役員変更登記の費用負担が軽くなります。
自動的に任期が伸びるわけではなく、任期を伸ばすためには定款変更が必要です。

また、任期が短いことにはメリットもあります。例えば、会社にとって好ましくない取締役がいた場合、2年後の任期満了時に再任しなければ自動的に会社を去っていくわけですが、任期を10年にするとそれが10年後になります。その他、正当事由なく任期満了前に取締役を解任するときには、その取締役は残りの任期の役員報酬を損害賠償として請求できるので、任期を10年にするとこの賠償額が上がることにもなります。

● 取締役会の書面決議が可能になります

今までは取締役が集まり実際に会議を開く必要がありましたが、改正後は書面による決議(イメージとしては稟議書を回す感じです)ができるようになります。登記申請の添付書類としても、書面決議による議事録が認められることになります。ただ、年間最低4回会議を開いて営業の報告等をするという現行制度はそのまま残りますので、実際に対面する形の取締役会が完全になくなるわけではありません。

ちなみに株主総会の書面決議は定款で定めれば現行法で可能です。

● 類似商号の規制廃止

今までは同一市区町村内で同一もしくは類似する名前の会社は存在することができませんでしたが、今後はこういった制限がなくなります。御社と同じ名前の会社が近所にできる可能性が出てくるのです。

商法による商号の保護はなくなりますが、不正競争防止法による保護は残りますので、嫌がらせや御社の名声にただ乗りしようとする会社に対しては商号の使用差し止め請求等の措置は可能です。

● 合名・合資会社の規制緩和
(例)
  • 1人合名会社可(現在は無限責任社員が2人以上必要)
  • 会社が合名会社の社員や合資会社の無限責任社員となれる(現在は個人しか無限責任社員となれない) 
  • 合名会社・合資会社・合同会社と株式会社の間で組織変更が可能になる

● 合同会社(日本版LLC)
合同会社(日本版LLC)は有限責任、かつ、定款に定めることによる幅広い内部自治が可能となる会社です。次期会社法改正と同時期に導入されます。ファンドを組む方や経営コンサルタント、研究開発系の業種などで利用が期待されています。

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